第210章 歯車③
「まずは、円を書くでしょ。」
“へ い だ ん”
「うん。」
「そしたら、それを8分割して………。」
“エ レ ン”
「うん。」
「半円を書いていくんです。一個ずつ。」
“く わ せ る つ も り”
「――――……そうなんだ、ここが結構、難しいね。」
「そうなんです。大変で。でも……重要なポイントです。」
私は目を見開いてアイビーを見つめる。
アイビーはうん、と真剣な眼差しで頷いた。
「次は?」
「次はですね……。」
“ワ イ ン”
「うん。」
次に文字を書く指を動かしたアイビーの手が、少し震えていた。
「中心から放射線みたいに……。」
“の ん だ ら だ め”
「――――うん。それで?」
「あとは好きな人の、名前を書いて………」
“あ の ワ イ ン に は”
―――――何が、入ってるの……?毒物………?
アイビーが震える指でなんとかペンを動かそうとした時、私の背後でまたガタン、と音がした。