第209章 歯車②
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「――――レベリオ強襲のあの日、俺……倒れて動けそうにない鎧を……ライナーを……飛行船に戻れなくても、パラディ島に戻れなくてもいいからここで殺してやろうって……思ってたんすけど………。」
「――――………。」
必死に気持ちに折り合いをつけてやってきた。
これまでずっと。
でも……あの時、これまでのこと……リンファの死も……多くの仲間の死も……完全に割り切って乗り越えてるわけじゃないんだと思い知った。
溜まりに溜まった小さな憎悪の欠片が、自分の命と引き換えても殺してやるという感情になり代わったんだ。
「――――でもね、ナナが俺のとこに来て……。」
「あ?俺は許可してねぇぞ。」
「あ、やべ、ばらしちゃった。」
「……………。」
「いやそれでね、俺の腕を引いて――――……『帰りましょう』って、言ってくれたんです。ここに残って俺がライナーを殺すことを……『誰も喜ばない。リンファも私も、リヴァイ兵長も』って。」
――――あの時ナナが腕を引いてくれなかったら。
俺は今、ここに生きていなかった。
こうして……こんなくだらない話を兵長とすることも、なかった。
「ねぇ兵長。俺が命と引き換えにあのジークや……ライナー……、強大な敵を殺したら、あんたは喜びますか?それとも……喜ばないんですか?」
「なんだその問は気持ち悪ぃ。」
「――――なんとなく。」
兵長は遠くを見つめたまま、なんとも不愛想な言葉でそれに答えた。
「――――その覚悟は悪くねぇ。だが、死ぬな。死んだら………何にもなんねぇだろうが。」
「………ははっ、厳しいっすね!」