第209章 歯車②
「兵長は寂しがりやですもんね?」
「――――誰が寂しがりやだ。それに……あいつは絶対にここには連れて来ねぇ。」
「なんでっすか?――――……あぁそうか、近くにいるのに抱けないほうが拷問ってゆうあれか。さすがエロ兵長。」
「あ?近くにいたら抱いてるに決まってんだろ。」
「………さすがに野外では勘弁してくださいよ。」
サッシュが呆れたように笑う。
――――こんな下らねぇ話をするのは……久しぶりな気がした。ミケやハンジ……エルヴィンと話した、下らねぇ話。
気付けば一人、また一人と……そんな下らねぇ話をする奴もいなくなって……こんな無益な会話が、このこびりつくような苛立ちとクソ髭に対する嫌悪感で胸糞悪い胸中を、わずかに晴らしてくれる気がした。
「――――ナナは、ジークと……ジークに相対することで生まれる自分の中の憎悪を怖がる。」
一言零したそれに対して、サッシュは遠い目をした。
「………そう、っすね………。」
「――――………。」
「――――本当は一刻も早く……俺はあいつを殺してしまいたいがな。」
「………駄目っすよ、兵団の判断がまだです。」
「………分かってる。だが遅すぎる。――――いつまでも時間があるわけじゃねぇ。」
「はい。それは……本当にそうです。いつマーレがまた奇襲してくるか、わからない……。」
「――――………。」
「そう言えばね、兵長。俺……ナナに助けてもらったんです。」
「あ?」
サッシュは何かを思い返すようにしながら、それを語った。