第209章 歯車②
―――――――――――――――――――――――
巨大樹の森にこのクソ髭を囲ってもう2週間が経とうとしている。
――――未だに本部からの連絡はない。
地鳴らしの実験を始めるという許可の報せも、ジークを殺せという命令も。
「――――ちっ……、いつまで経っても動かねぇと……身を滅ぼすことになるぞ……。」
「――――兵長?」
「サッシュ。」
木の上からジークを見下ろしていた俺の横に、すとん、と降り立ったのはサッシュだ。
「連絡、ないっすね……。先延ばしにしたところで良い事なんてないはずなのに。」
「……同意だ。とりあえずあの余裕をかましてやがるクソ髭の両腕でも捥いどくか。」
「いや駄目でしょ。巨人化したらどうすんすか。」
「――――ちっ……。」
「そういや兵長、全然息抜きもしてないでしょ?唯一の娯楽のワインも飲んでないし……。俺見てますから、紅茶でも飲んで来たらどうすか?」
「――――………いや、いい。」
「駄目ですって。イライラしてるからそんな軽く『両腕捥ぐ』とかいう発想が出てくんですよ。まぁまぁ怖いですからね、その発想。」
「……捥いだってすぐ生えてくんじゃねぇか、気色悪ぃ。」
サッシュは俺がイラついていることをよく分かっているようだった。ふ、と生意気に片眉を下げながら息を吐いた。
「………ナナに来てもらえば良かったっすね。」
「――――あ?」