第209章 歯車②
地下牢から続く廊下の角を曲がったところでミカサとばったり会った。別の独房にルイーゼを連れて来て、そう言えば少し話声がしていた。目が合ったミカサはどうにも辛そうな顔をして、頭を押さえている。
「ミカサ?どうかしたの?頭、痛い?」
慌てて駆け寄ってミカサの顔を覗き込むと、目を細めて痛みに耐えるように俯いた。ミカサがこんな辛そうな顔をするなんて、余程痛いのだろうと察した私はミカサの手を引いて、地下牢を出た。
「――――少し休もう。おいで。」
「うん………。」
別室に集まっていたみんなのところにミカサを連れて行き、椅子に座らせる。
脈や体温に異常はなさそうだ。
あくまで頭痛だけのようで、ミカサは少しの水を飲んで、息を吐いた。
「――――大丈夫ナナ、ありがとう。」
「うん……。頻発するなら言って。調べた方がいい。」
「――――わかった……。」
フロックさんたちの行動に私たちは、動揺していた。
誰もが口を噤んでしん、と重い空気が漂う中…ハンジさんが口を開いた。
「――――これからの、ことだけど。」
信頼する団長の発した言葉に、一同はみんな顔を上げる。
「やるべきことがある。兵団の上層……ザックレー総統やピクシス司令は、イェレナを注視している。そして……私も。これまでの……過剰なほど自分達に見張りを付けさせたり、行動を記録させていた……。だからイェレナが単独で何かを仕掛けることなどできないと、頭のどこかで思っていたけど……。」
ハンジさんの表情は昏かった。きっと彼女の頭の中には、これまで力を合わせてこの島の発展を手掛けて来た義勇兵のみんなとの日々が、思い出されているだろう。
それはきっとみんなも同じだ。
でも……考えれば考えるほど、嫌な想像が、色濃くなっていく。