第209章 歯車②

「――――ねぇナナ。」

「はい。」

「――――私たちは正直、義勇兵とのつながりが相当濃いものになってしまっていて……、あの日々を、あの日々の彼らの表情を思い返すと、『そんなはずはない』って……僅かに……思ってしまうんだ。」

「………はい。」



ハンジさんの言葉に、ジャンもコニーもミカサもアルミンも、同意だ、というように俯いた。





「その思い込みは正常な判断を鈍らせる。だから――――ナナ。私達とは違う目で、ナナは……この現状をどう見る？」





私は苦々しい言葉を何とか、喉の奥から引っ張り出した。







「――――監視させたのは、信頼関係を築くためじゃなく――――、油断させるため……？」








私の言葉に、みんなは……ぐ、と悔しそうに、苦しそうに俯いた。







「――――例えばフロックさんが……、その監視に頻繁についていたと……したら……。調査兵団の中に、代わりに動く者がいるのなら……イェレナさん自身はなにも動かずとも、今回ことも……そして……その先に何か、目論んでいることも……達成できてしまう……。」







――――そう、例えばジークさんとのやりとりも、この島にジークさんが来てしまえば……私たちの監視のもと、ジークさんとイェレナさんの接触は断たれる。何かを企んでいたとしても、これまでのように行かないはずだと……、私も思っていた。

けれど、そこを繋ぐ者を引き込んだとしたら。

そして……引き込むならどんな人物を選ぶ？







「確実ではないですが、もし私がイェレナさんの立場で……手の内に引き込む者を選ぶとしたら……正義感があって……自らの信じた正義を貫くためなら犠牲を厭わない人………。そして――――何かを成し遂げたくて、もがいている人……。」







――――フロックさんは、ピッタリじゃないか。

そう、思ってしまう。