第209章 歯車②
「……ねぇアイビー、これは……今回のことは……、あなたが信じる道を行ってのことなの?」
「……………。」
笑顔から一転、アイビーは眉間に皺を寄せて、深く考え悩むような表情でまた俯いた。
「胸を張れるの?自分の信じた道だと。」
「――――………それ、は………。」
「信じるものが違えばすれ違う。分かり合えないこともある。それを……兵団が必ず正しいから従いなさいとは、言わない。むしろ……ちゃんとそれぞれが考えて進む道なら……分かつことだってあると、私は思う。――――でも、あなたが……迷っていそうだから。」
「……………。」
「――――リヴァイ兵士長に教えてもらったの。多くのこと。その中でも、『後悔しないように、自分で選ぶこと』これだけは……曲げない。私を愛して、信じてくれている人を裏切ることになるから。」
私の言葉にアイビーの目は、大きく開かれた。
――――ねぇリヴァイ兵士長。
あなたの言葉は、あなたの揺るがない信念は……こうやって広がっていく。
あなたが導き育ててくれたものを、私はまた別の誰かに、還したい。
そう、思うんです。
何かの呪縛から解き放たれたような表情で制止したアイビーの頭をまた、ぽんぽんと撫でる。
「――――ゆっくり考えて。あなたが後悔、しないように。――――あなたのことが、大事だから。私も………リヴァイ兵士長も。」
「――――……。」
「話してくれるなら、いつでも呼んでね。」
そう言い残して、私は地下牢から地上に上がるための階段に向かって、コツ、コツ、と音を鳴らして歩を進めた。