第209章 歯車②
「………ナナ、さ…ん………。」
「――――震えているのはなぜ?」
「…………。」
「怖い?それとも……寒い?」
「――――……怖い………です………。」
「――――そう………。」
まだ15の女の子が、薄暗い地下牢に一人閉じ込められて……怖いというのも分かる。……けれど、兵規を破るというのはこういうことだ。私には……悪いけれどどうにもしてあげることはできない。
せめて話題を変えようと試みるため――――
あの翼の日の話を持ちだした。
「ねぇアイビー、翼の日……、遠くからわざわざ来てくれて、ありがとう。」
「…………!」
アイビーは、パッと顔を上げた。さっきよりも幾分かは怯えや不安が軽くなったような、そんな表情だ。
「――――リヴァイ兵士長の背中を追って、ここまで来たの?」
「………はい。」
「………私と一緒。」
ふふ、と笑うと、アイビーはくりくりの目を更に丸くして……まるで出会った時の少女のような顔をした。
「そうなのですか……?!私、てっきり……調査兵団で出会って……、2人は恋人に、なられたんだって……!」
「ううん。私が子供の頃……そうだね、ちょうど翼の日に出会ったアイビーくらいの歳の頃に……初めて、恋をしたの。不機嫌そうで、ちょっとおっかなくて、でも誰よりも強くて優しい………あの人に。」
「――――今は……、今も……ナナさんはリヴァイ兵長のこと………。」
「――――愛してるよ、苦しいぐらいに。」
「――――………。」
私が言い切ると、アイビーは少し切なそうに、でもどこか嬉しそうに笑った。