第209章 歯車②
「――――確かに君の主張は正しいのかもしれない。フロック。」
ハンジさんはフロックの主張を認める一言を口にした。
そうなんだ、フロックさんが間違っているとは誰も言い切れない。――――私だって、エレンを信じている。彼が何よりも誰よりも、この島を……仲間を守ろうとしているのを知っているから。
――――でも………もし…………それが……私達を大切にし過ぎるあまり、 “私達以外” の命を命として扱わないようなものだとしたら……私たちはそれを、間違っているって、ちゃんと止めなければならない。
だからこうして……ハンジさんも、私も……迷っている。
「でも形はどうであれ……私はジークの作戦を完遂するとの決断を下した。すべては私の責任だ。だからこれ以上勝手な真似は許されない。君たちはエレンの情報を外へ漏らした罪で裁かれる。この5人を懲罰房へ。」
信じるものが違えば、道は違う。
――――分かっていたはずなのに……やるせない。
ハンジ団長の判断に従い、ジャンがフロックを、ミカサがルイーゼを、コニーがヴィムを、アルミンがホルガ―を、そして私は……アイビーを懲罰用の独房へと連れて行った。
独房に入ったアイビーは、きょろきょろと周りを見回して……まるで追いつめられた小動物のように、怯えた顔をした。
――――あの翼の日、目を輝かせていた少女が……まさか、兵士として入団して……そして兵規違反で独房に入ることになろうとは……思ってもみなかった。
まだ成長段階のその細い肩を僅かに震わせている。
私は思わず、格子の間から手を差し入れて、彼女の頭をそっと撫でた。