第208章 歯車
「ハンジさん!!」
「――――ピュレ。どいてくれ。」
「4年前あなた達は我々壁の民に世界の現実を伝えてくれました!敵の正体は世界中の人類であり我々の正体は巨人であるという現実です!!しかしイェーガー氏がもたらした勝利により我々の未来は開かれた!!エルディア人に生きる未来はあるのだと!!そうであれば兵団とイェーガー氏との関係は我々エルディア国民の問題です!!」
真実を追求する、強い目をしたピュレが私に向かって声を荒げる。そしてもう一人……すっかり地下街の人間ではなく、情報屋でもなく、この国の民に真実を届ける生き方を選んだジルが、静かに言った。
「――――なぁハンジさん。あんたは前に『情報は納税者に委ねられる。』と言った。その姿勢に変化があったのか?」
――――その表情と声は、落胆、失望のそれだった。
「――――なぁ、ナナも……お前ら、そんなんじゃなかったはずだろ……?俺達国民に大事なことを伏せてこそこそと……、そんなの、前の王政の奴らと同じじゃねぇかよ。」
ジルが冷たい目線をナナに落とした。
ナナは怯えるでもなく、強い目を向け返した。
――――それはきっと、私を庇ってのものだ。
「ジルさん……。全てを分かってくれとは言いません。ただ――――状況が変わったんです。壁が開かれ世界と繋がり、情報の持つ意味が変わりました。」
ナナが言葉を静かに発したその時だけ……少しその場が凪いだ。その隙に私はピュレを押しのけ、兵団支部への門を無理矢理開いた。