第208章 歯車
コニーもまたジークさんの口から語られたその事実を知った。――――それでも、絶望や憎しみに飲まれることなく……ここにこうして自分の足で立って、大切な人が悲しんでいるその背中に寄り添ってあげることができるなんて。いつの間にこんなに強くなったのだろう。
――――あれは確か……ライナーやベルトルトに奪われたエレンを取り返しに行く直前のこと……ウォール・ローゼの壁上で……コニーは自分の母親が巨人になっているかもしれないと、震えるような声で私に言ってきた。
その時は最悪の想像しか出来なくて……曖昧に、終わってしまったけれど……、今こうして一つずつ真実を手に入れながら、同時に何かを失いながら……、コニーもまた変化している。
「――――ナナさん、俺は……医学的なところはなんにも……わからねぇけど……。」
「…………?」
コニーはニコロさんの背中をさすりながら、私に問う。
「――――サシャのあの出血の多さは……撃たれた場所が悪かったとか……そういう、ことなんですか……?」
「――――うん……。最初の銃撃で呼吸に必要な臓器が損傷して……そこから更に……太い血管が破れた。それで………。」
『手は尽くしたんだけれど』そんな言い訳はしない。小さな意地とプライドを込めて、私は返答した。
「――――私には、成す術が―――――無かった。ごめんなさい……。」
「………もう、いい………。」
「――――………。」
「聞きたくない、やめてくれ……。」
私とコニーの会話を無理矢理終わらせるように、ニコロさんが頭を垂れた。