第208章 歯車
――――恋人同士だったわけではないのだろうか。
……彼は未だ自分のサシャへの気持ちに気付いていないような言葉を選んだ。いや、気付いていないふりをしているのか………、耐えられない悲しみを少しでも和らげるように……。
そんな彼の様子にコニーも思うところがあったのだろう、背中に添えていた手をまた少し優しく上下に動かした。
「――――あいつに……美味いもんいっぱい食わしてくれて、ありがとうなニコロ。」
「………お前はどうなんだよ。」
104期の中でもサシャとコニーはいつも一緒だった。ニコロさんのその問は、コニーの想いを探るための問だった。
「……俺とサシャは……双子みてぇなもんだった。――――自分が半分、なくなっちまったみてぇだ………。」
コニーは取り乱すこともなく、ただ静かな目でニコロさんの背中をさすった。コニーだって……辛い、はずだ。半身だと言うサシャを亡くしただけでなく……依然としてお母さんは巨人に変えられたまま……ラガコ村で身動きを取れずにいる。
――――なぜ彼はこんなに、冷静でいられるのだろう。
――――だって、私たちは聞かされた。
コニーのお母さんを……コニーの村の人たちを巨人化させた張本人……ジークから、その事の真実を。