第207章 強
「――――ナナ……、一度、ぎゅって抱きしめて欲しい。」
「……得意です!」
「――――ははっ!」
体を起こしてくれたハンジさんに、両手を広げる。
ソファ越しに、凄く無理のある体勢で……ハンジさんは私の胸の鼓動でも聞くように、頭を預けてくれた。私は彼女を抱き締めながら、背中の自由の翼に加護がありますようにと……祈りを込めて優しくさする。
抱きしめた体温はやっぱり温かくて、心が、凪いでいくようだ。
「――――あぁ、やっぱナナなら抱けるな。」
「今は私が抱いてますよ?」
「いや性的な意味で。」
「えっ?!?!」
ハンジさんの一言に思わず体が一瞬硬直した。ハンジさんは意地悪で悪戯な笑みで私を見上げている。
「――――もう!ハンジさん!!」
「ははっ!」
ハンジさんの頬をむぎゅっとつねってみるけれど、ハンジさんがこんなに快活に笑ってくれることも……最近少なかったから。私はそのなんでもない、くだらないやりとりがとてもとても――――……嬉しかった。
ハンジさんは小さく息を吐いてから再び私の胸に頭を預けて、私の腕の中でまるで少女みたいに、小さく呟いた。