第207章 強
「守りたい、死なせたくない、最善を尽くしたい――――……そう、思うのに……、何一つ……っ……うまく、行かない……。私の判断が、行動が……力が……、足りないばっかりに……!」
「――――………。」
「エレンもさ……エレンだよ……、なんで昔みたいに……っ……、まっすぐ目を見て、心の内をちゃんと……っ、話してくれたら、いいのにさ……!」
ハンジさんの、声が震えている。
――――まだうら若いこの人の肩に、どれほどの重責がのしかかっているのか。
――――私には一生、わからないだろう。
気の利いた言葉どころか……『はい』も『いいえ』も……そんな相槌すら……うてなくて……、ただハンジさんを背中から抱く腕に力を込める。
「――――情けないね、こんな団長……。団長補佐も、困っちゃうよね、ナナ……。――――こんな私の側で……胸を張れないかも、しれないけど……。」
「――――………。」
違う、それだけは違う。
そっとハンジさんの眼帯を指で包んで、小さく呟く。
「――――ハンジさんの眼帯、見慣れないけれど……好きなんです。」
「……好き?」
「はい。――――私が側にいていい、理由みたいでしょう?」
「――――………。」
ハンジさんが目を丸くして、私のほうに少し顔を、向けた。
「ハンジさんの視野がこの眼帯のせいで狭くなったのなら……代わりに私を、置いてください。」
「――――………。」
「――――判断が鈍るなら一緒に考えます。行動が、力が……足りないと思われるなら、どうかこの腕を使ってください。」
「――――………っ………。」
ハンジさんを抱き締めていた腕を少しだけ緩めて、大丈夫だって、笑って見せる。