第207章 強
「――――私もそう、思います。でも……ジークさんの思惑だとも、言い切れない。」
「――――イェレナ……?」
「―――はい。前々からイェレナさんのジークさんへの信頼は度が過ぎていると思っていました……。ううん、もはや信頼どころじゃない……あれは信仰です。――――神さながらだと思っている。――――ジークさんをやすやすと食わせたりなんか、するはずない。」
「――――最悪のシナリオは、ジークとイェレナが我々の知り得ぬ何かを企んでいるということと……、別軸だとすれば、イェレナがジークを思うがあまり独断で動いた線……か………。」
「どちらにせよ、ジークさんがパラディ島に上陸した以上、今までのようにジークさんとイェレナさんは密に連絡をとることができないはずです……。ここからなにか綻びが出るようであれば……それぞれを押さえることが、出来る……かもしれない……。」
「ジークは……リヴァイが付きっ切りで拘留してるしね。」
「はい。夕方には発たれました。」
「――――エレンはどう噛んでると思う?ナナ。」
――――返答に、迷った。けれど私は、本心を伝えた。
「――――エレンは……ジークさん達に従ってる、フリを……してると、思います……。」
「フリ?」
「――――彼だけの、彼にしか見えないものを見てる……。それだけを信じて、突き進んでる……。そんな気が、します。」
「―――――結局エレンの真意はナナでもわからない、か………。」
「はい……。」
ハンジさんは再びふぅ―――――、と長い息を細く吐いてから、またソファの背もたれにどかっと寄りかかった。