第207章 強
「―――おい、どうして任務中に酒がいる?」
「兵長、これは……ですね……その……。」
サッシュがあからさまに動揺を見せると、珍しくよってたかって俺に次々と他の奴らが意見をしてくる。
「へ、兵長!これは憲兵の連中しか飲めなかったマーレ産の希少なやつなんですよ!」
「そうですよ!新兵が頑張って俺達の為に仕入れてくれたんですよ?!なんだっけ、誰だ?あの……女の……!」
「そうそう、ルイーゼとアイビーだよ!!」
「そう!せっかく若い二人が仕入れて来てくれたのに……ここに置いて行くんですか?!」
「少しくらい、楽しみがあっても……!」
「紅茶があるだろ。」
「兵長おおおぉぉぉおお………。」
なんなんだその落胆ぶりは。
――――それに……、アイビー、あいつの顔が浮かんだ。
俺達を労おうと仕入れて来た、というのは……あいつなら本当にそうなのだろう。
「めんどくせぇな……いいだろう、持っていけ……。」
「ありがとうございます!!!」
一通りの積荷を確認し終えて、さぁ発つか……と兵達に目をやる。
「いつでも行けますよ、兵長。おいアーチ、バリス。お前らの班も行けるよな?」
『はい!』
「――――よし、じゃあ………」
俺達が出発するその時……ジークに会わせたくはなかったが、来ると思った。
「――――リヴァイ兵士長!」
僅かに走るだけで息を切らすような体のくせに、目一杯駆けて来るのは――――ナナだ。