第207章 強
「――――ねぇナナちゃんはさぁ、酒は飲む?」
「――――あ?」
「だから前にも言ったけど、弟が世話になったお礼をしたいわけ。――――こないだ取り乱させちゃったお詫びもかねて……ね。」
ジークの拘留には念には念を入れる。
奴が巨人化したところでぶん投げるような石、岩のない場所……且つ俺達が最も機動しやすい場所。巨大樹の森でしばらく拘留する。――――兵団からの指示が出るまで、だ。
長けりゃ1ヶ月以上になる覚悟で、物資の準備を急ぐ。
準備が整い次第巨大樹の森へと出発するため、レベリオへの遠征から戻ってすぐ、俺が率いる調査兵団の精鋭30名はその準備で走り回っている。
「てめぇは自分の置かれてる状況がイマイチ理解できてねぇらしいな。」
「それなりに理解してるつもりですが?――――まぁ、手厚くおもてなししてもらえるとは思ってなかったけどさ、ここまで警戒されたら傷ついちゃうな。」
「どうでもいいことをぺらぺら喋るんじゃねぇよ。黙ってろ。」
「――――リヴァイだってナナちゃんと離れたくないでしょ?……連れて行く?俺の見張り隊に。あんなにすぐ参っちゃうか弱さだったら、放っておけないよな?」
いつまでもへらへらと……反吐が出る野郎だ。
「――――あいつは問題ない。それに―――……お前にだけは指一本触れさせねぇよ。」
「――――……へぇ、それは残念。」
しばらくして、走り回っていたサッシュが俺のところに戻って来た。
「兵長、物資準備整いました。いつでも行けます!」
「―――ああ。」
準備された荷馬車の積荷を確認していくと、見慣れない木箱が積まれていた。
「―――おい、これはなんだ?……ワイン……?」
「あっ。」
「あ?」
思わず声を上げやがったサッシュの方を見ると、目を泳がせてやがる。
――――まさか俺に黙って持って行こうとしてやがったな?