第206章 隔意
ふとエレンが、私の首筋に残る……かつてリヴァイさんが犬歯を突き立てた傷跡に指先で降れた。
「兵長の所有印か?これ。」
全てボタンを外されて暴かれた肌に初めて……エレンの唇が近付き、興奮しきったような荒い吐息がかかる。
心臓が収縮して、心音がうるさい。
思わず私を抱くエレンの腕を掴んで力を込めてみても、微動だに……しなかった。
エレンの濡れた髪から滴った滴が一滴私の胸にぽたり、と落ちて……胸のふくらみに沿ってつつ、と流れていく。
エレンの指が、下着の淵にかけられた。
「――――や、め……っ……!」
ぐい、と力任せに下着を下げられ、現れた胸の頂きを避けるように水滴が流れていく。
それをエレンは……舌先で下から掬い取るように、舐めた。
「――――っ………!」
はっ……と息を吐きながらぴくんと身体跳ねさせた私を、淫乱な女だと蔑むように……微笑を含んだ表情で見下ろしながらエレンは……私の片胸を、握りつぶすように強く掴んだ。
――――肌に、爪が食い込む。
「……ッ……!」
「なぁナナ。答えろよ。話をするんだろ?兵長は何回お前の中に出して妊娠させた?」
「……っ…そんな、こと……!」
「――――その時、お前はどんな風に鳴いた?」
エレンが私を見る目。
それは今までに一度も見たことがない目だった。
――――私は一体、誰と相対しているのだろう。
――――感情のない、虚ろで人形のような目。
これは誰?
「もっと、もっとって誘ったのか?」
「――――ぃ、たっ……!」
胸を握りつぶすように爪を立て、その先端を潰すように捻る。痛みで、息が……上がってしまう。
リヴァイさん、助けて……なんて……呼ばない。
私がこうして、エレンと向き合うって決めた。