第206章 隔意
「――――した。兵長がお前を王都に閉じ込めた方法が、有効だと思った。」
それは大きなことだ。
だってヒストリア女王に獣の巨人を移すことができない状態のまま……ジークの任期が切れて……ジークが命を落としたら…… “地鳴らし” は使えない。諸外国を牽制する地鳴らしがない以上、攻め込まれて滅びるのを待つしかなくなる。
いくらヒストリアの身を守るためとはいえ、外からの攻撃でヒストリアどころか島の皆が死に絶える可能性だってある。
そんな危ない橋を渡るだろうか?
――――違う。
きっと……相応の策が……あるってことだ。
私たちに提示して来た、地鳴らしを抑止力にしてこの先50年で国家水準を諸外国並みに成長させるという計画とは別に……。
私は怖くなった。
そんな大事なことを、エレンが一切話してくれないことが。
――――どうやっても、話し合わなきゃいけない。
じゃないと……絶対に、後悔する。
「――――それは、あなただけの判断じゃなくて……ジークさんが……。」
「なぁ俺の質問にも答えろよナナ。」
エレンは私の顎を掴んで、冷たく見下ろした。
……けれどそれでも、話してくれた。聞こうとしてくれるのなら、私はそれに応じたい。
「………いいよ。なに?」
「――――何回くらい中で出したら、妊娠するだろうな。」
「………!!」
筋肉質な逞しい腕が私を逃がさないように捕まえて、更に強く引き寄せられる。
胸の間に鉄格子が食い込んで、それを避けるように顔を背けると……彼のほうに首筋を差し出してしまう恰好になる。