第206章 隔意
「――――エレン。」
「………なんだよ。」
「あなたが1人で全てを背負い込んで傷ついて苦しんでまで、守って欲しくないよ。」
「――――………!」
「――――もしエレンが本当に私を犯したいなら、そうすればいい。その代わり話して。あなたがなにを考えて、何をしようとしているのか。ちゃんと考える。一緒に。」
「……は、尻の軽い女だな、本当に。やってやろうか。――――脅しじゃなく。」
エレンの目がギラリと鋭く光ったように、見えた。
怖くないわけじゃない。
でも……そんなことよりも、なによりもエレンと話をしなければいけない。
体は大きくなっても……この子はいつまでも、気性の激しい……仲間想いの子供なんだ。
目を逸らしたり怖がったり震えたりしない。
―――私はエレンの上官で、姉で。諭す立場だ。
じっとその目の奥を見上げると、ものすごく苛立ったようにエレンが私のジャケットを両肩から無理矢理引きずり下ろした。
「――――……抵抗しろよ。」
「――――しない。話して。あなたが何を考えているのか。―――本当にジークさんのことを信じているの?……それで、いいの?後悔……しないの……?」
エレンはぎり、と唇の端を噛みしめながら私の腰に左腕を回してきつく抱き寄せ、逃げられないように押さえつけてから……右手で器用にブラウスのボタンを、ぷち、ぷち、と外していく。
――――多少の欲情の色を向けられたことはあっても、ここまでされたことはなくて、ざわ、と鳥肌が立つ。
怖いんだ、私は初めて――――……エレンのことが。
「――――ヒストリア女王に妊娠すれば……獣の巨人継承を免れるって……助言した……?」
「――――………。」
「答えてよ、エレン………。」
私があくまで話をしようと問いかけると、エレンは静かに答えた。