第206章 隔意
コツコツコツと……重なる足音が聞こえる。
石造りの階段を下りて来たのは――――、ハンジさんとナナだ。
「何してるの?エレン。今……鏡に向かって話しかけてた?」
「――――………。」
牢屋越しに俺の側に寄るハンジさんと、一歩引いて後ろで控えるナナ。
「鏡に映る自分に向かって話しかけてたよね?戦え、戦えって。2回言ってたでしょ?何と戦うの?」
「………ハンジさん、あの……。」
「ね?何と戦うの?戦え戦えって2回言ったってことは2回戦あるのかな?」
「………そこはもう、いいかと……。」
「いやだってナナ。エレンが何も言わないから分からないじゃない。普通は一人で喋ったりしないと思うんだ。ナナは鏡に映る自分に話しかけたことある?」
「……ない、ですけど……あの、そういう……年頃とかも……あるって、言いますし……。」
「あぁエレンそれに髪型も変えたよね?その髪型もかっこいいと思うよ私は!!ちょっと乱れてる感じとか頑張って無造作に見えるような努力が伝わってくるし!!」
――――黙ってれば食い下がると思ったのが間違いだった。
一向に引く気配のないハンジさんに、思わず乗せられて声を荒げてしまう。
「何しに来たんですか?!」
「何って……話に来たんだよ。初めて会った時なんて一晩中巨人について語り明かしたじゃないか。私の一方的な話を……君は聞いてくれた……。」
「――――………。」
「――――エレン、私達は……あなたと話をしたい……。」
ナナが一歩俺のほうに歩み寄って、悲しい目を向けて言った。