第206章 隔意
進撃の巨人の力で垣間見える未来は、完全じゃない。
一つ一つが切り取られた写真の寄せ集めのように断片的で……ナナに関してのことは、肝心なところは視えない。
俺が視たのは一度だけ――――……遠くで血を流してぐったりと横たわり、風でふわりとなびいた白銀の髪。
――――あれはナナだった。
視えたのはその瞬間だけだ。
いつどこで、何が起こるのかはわからない。
――――でも、ナナを襲うならそれは敵だ。
――――敵は生かしておかない。
殲滅する。俺が。
「――――戦え。戦え。」
濡れた手で、手洗い場の上に据え付けられた古びて曇った鏡を拭う。
――――そこに映る自分は、数年前よりも随分大人びたように見える。もう……兵長やペトラさん、グンタさん、オルオさんやエルドさんに守られてばかりだった頃の俺じゃない。
ナナだけじゃない。
ミカサもアルミンも………ジャンもコニーも……大事な奴らを、守るために―――――戦え。
行きつく先を……未来を知っているのは俺だけだ。
俺が歯車を回さなきゃ――――……他の誰にもできないことだ。
辛くなんてない。
信じていた俺に裏切られたかのように思うあいつらだって辛いはずだ。
――――辛くない。
俺は大丈夫だ。
一人でも……進んで行ける。