第206章 隔意
少し疑問に思った。
――――あのヒストリアが……真面目に、正しく女王であり続けようとしていたヒストリアが……婚礼を前に子供を授かるような行動をとるなんて考えにくいと。
余程の恋をした、ということなのか……それとも……
「――――兵団側の思惑を知っていた誰かの……進言……?」
ヒストリアの身を誰よりも案じ、兵団側の思惑に気付けて……且つ、ヒストリアがその進言を受け入れるような関係性。
考えたくはない。
だけど……どうしてもあなたの顔が浮かぶの。
――――あなたは、何をしようとしているの?
――――エレン。
「――――ナナ。」
「はい。」
「――――これ書き終わったら……、エレンと話をしに行こうと思う。」
「はい。」
ハンジさんが書き物をしていた手を止めて、私に目をやった。
「一緒に来て欲しい。」
「もちろんです……。」
誰もが思っている。エレンの様子がおかしい、もしかしてジークと一緒に私たちに牙を剥くつもりなんじゃないかって。
――――レベリオ奇襲の成功は明日には大きく報道され、民衆は歓喜に沸くだろう。
……でもエレン、あなたが強行したこの作戦で……私たちの中でのあなたの信頼は損なわれてしまった。
何よりも、誰よりも信頼し合っていた……仲間、なのに………。