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【進撃の巨人】片翼のきみと

第206章 隔意




港から最も近い都市であるシガンシナ区の兵団支部を本拠点として各兵団幹部が集まっていた。

そこにエレンは拘束され地下深くに幽閉された。兵団の意志を無視した単独行動と無謀な作戦に調査兵団を動かし、兵規に背いたからだ。

ジークさんは……もちろん万全を期して、リヴァイ兵士長が30名の武装兵士を連れて隔離することになった。その場所はリヴァイ兵士長とハンジ団長と私、3名の情報伝達係にしか知らされていない。

これほどの措置を取るのは、兵団側がジークさん一派……主にイェレナさんを筆頭とした義勇兵たちを完全に信頼などしておらず、想定外の動きを見せた場合でも対処できるようにするためだ。



――――けれど本当は……兵団側には思惑があった。



レベリオを奇襲する数か月前に、その思惑は潰えることになる。それは――――





「――――そういえばヒストリア女王のお腹の子は……もうすぐ産まれるんだっけ?ナナ。」





一通りの報告をまとめるためにハンジさんが執務室で机に向かいながら、ぽつりと一言を零した。





「いえ、もう数か月先だったかと。―――今は王都から離れて孤児院からほど近い場所で……子供の父親になる人と一緒に生活していると聞きましたよ。」



「――――そうか。」





兵団側は……ヒストリア女王を巨人化させて……このレベリオ襲撃で回収したジークさんを、食わせることを目論んでいた。

“地鳴らし” の鍵となりうるのはエレンの持つ “始祖の巨人”と “王家の血を引く者の巨人”だからだ。真意も分からず、牙を剥かれれば厄介な存在であるジークから獣の巨人をヒストリア女王に移してしまえば……兵団側としては実に扱いやすくなる、というわけだ。



けれど数か月前、ヒストリア女王の懐妊が判明した。



婚礼の儀も成していない女王の懐妊に世間は揺れたが……、それでも世継ぎを喜ぶ民衆の声は大きく、久方ぶりに街中がお祝いムードになっていた。妊娠している状態で巨人化などさせれば、お腹の子がどうなるかわからない。

もし兵団がヒストリア女王の巨人化を進め、子供が犠牲になった……なんてことになれば、兵団側の民衆からの支持は地に落ちる。

兵団側は……懐妊したヒストリア女王にジークを移すことを諦めざるを得なかった。

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