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【進撃の巨人】片翼のきみと

第205章 開戦⑤







「まったくだ。いいように乱されやがって。――――わかってただろう?お前も。あの髭面の魂胆なんて。」






ナナは小さくこくん、と頷いた。

――――それでも抑えられなかったのは……今も蘇るんだな、エルヴィンの死を確認したあの瞬間の恐怖も、喪失感も……絶望もすべて。



―――もう随分癒えたと思っていたナナの心の傷は、想像よりも深く……今もまだ痛むのだろう。



ここが飛行船の中で良かった。

まだ今なら、この小さな体を……呼吸が落ち着くまで、いつものナナに戻れるまで抱いててやれる。







「―――落ち着け。ナナ。こうしててやるから。」





「わ、たし……っ………。」





「なんだ。どうした。」





「―――――憎い……、って……思……、許せな、っ……ごめ、ごめん、な……さい……っ……。」





「――――………。」







ナナはいつも俺に新しい感情を見つけさせてくれる。だがナナにもあった。未知の感情が。

仲間を、愛した男を奪った奴を目の前にして…… “憎悪” という感情が芽吹いたと同時に爆発して、乱れた。

震えるその手は、単に過呼吸によるものか……それとも怒りか、憎悪にとりつかれた自分自身が怖いのか。







「――――いい。謝るな。」







ひくっ、と時折震わせる身体を引き寄せて、腕の中に抱く。身体を強張らせながら激しく呼吸を乱すナナを諭すように……だが、気休めではない現実を伝える。






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