第205章 開戦⑤
「――――おいナナ……っ……!!」
滲む視界に、リヴァイさんが驚いた顔で私を制そうとして手を伸ばしたのが見える。
――――わかってる、こんなことで取り乱しちゃいけないって……、でも、止められなかった。
だって、ここにこうして口元に笑みを湛えて……、仲間を看取って立派だ、なんてことを言う。
エレンと暮らしてたなんて情報を得てるなら、私とエルヴィンの関係性だって知っていた可能性が高い。そして悪びれもせずに……愛する人を奪ったその相手と、談笑しようとする。
自分が蹂躙した調査兵団と……手を組もうと言う。
――――エレンと一緒になって……私たちに有無を言わさず承諾せざるを得ない状況まで用意周到に作り込んで。
「……っ……返、して……っ……!!」
「はは……おいおいどうしちゃったの?」
「―――――エルヴィンを、みんなを、返してっっっ――――――………!」
駄目だ、感情的になっては駄目。
そう、思うけれど……どうしても抑えられなかった。
「ぁああああっ………!」
私は引きつる呼吸で声を上げて泣きながら、ジークさんの胸元を掴んで力の限り拳でその胸を打った。