第205章 開戦⑤
なにが言いたいのか……私のことをどこまで知っているのかを暗に言いたいの?
いや、そんなことをしても警戒させるだけだ。
意図なくこんな無益な会話をする人だとは思わない。
なにか……探ろうとしてる……?
「お医者さんならそうだな……多くの仲間や……大切な人の最期を看取ってきたんだな。」
「―――――……!」
その言葉に、私は目を見開いて硬直した。
「辛い死もあっただろう?見届けたくない死も。それを乗り越えてこうして調査兵団にいるなんて――――……本当に立派だな。―――――なぁ、ナナちゃん。」
その言葉に思わずジークさんの方を見た。
その表情は真意が読めない、さっきとなんら変わらない表情のはずなのに……私には、あざ笑っているように見えたんだ。
――――わかってるんでしょう?
動悸が激しくなる。
怒りに身体が震える。
呼吸が乱れる。
私が大切な人を看取らなくちゃいけなかったのは。
あなたが。
私の最も大切な人を……!
岩で打ち砕いて……苦しませて……っ……
私が愛したあの蒼天のような蒼い瞳に闇を差した……っ……!
私から、リヴァイさんから……調査兵団から……っ……エルヴィンを―――――……奪ったのは………っ!!!
「―――――返してよっっっ………!!!!!」
私は―――――……気付けば涙ながらにジークさんに、掴みかかっていた。