第205章 開戦⑤
エレンの隣に座り込むジークさんに目をやる。
改めてその顔をちゃんと見ると、エレンにあまり……似てない気がする。でもイェーガー先生の面影は確かにあって……顔に馴染んでいる妙な作りの眼鏡が、彼の本心をより隠しているように見える。
丸縁の上部を細い支柱が繋いでいて、双方のガラス面が破損しにくくなっているのか……とにかく、ハンジさんの眼鏡とはまったく印象の違う不思議な作りだ。
口元は僅かに笑みを湛えていて、本心が読めない怖さがある。
「……あなたももう修復がほとんど終わってるでしょう。」
「――――はは……そんな怖い顔しないでよ。可愛いお顔が台無しじゃないの。―――なぁエレン?」
ジークさんはエレンに目をやったけれど、エレンもなにか思うところがあるのか……チラリと一瞥だけして、口を噤んだ。そして一瞬私の方へ目線を向けて、僅かにきゅ、と眉間に皺を寄せてまた目を逸らした。
その仕草から……もしかしたらエレンにとって、私がここにいることは想定外で……避けたかったことなのかもしれないと想像した。
「――――おい、余計な詮索をするんじゃねぇ。せっかく再生したその手足を再び落とされたくないならな。」
ジークさんから片時も目を離さないリヴァイ兵士長が腕を組んだまま牽制をする。
「……詮索じゃないよ、ただお話したいだけ。――――ねぇナナちゃんはさっき仲間の死亡確認をしたって言ってたけど……もしかして医者なのかな?」
「――――そう、です……。」
「へぇ!奇遇だな。俺の父も医者でね……って――――、知ってるか。エレンと暮らしてたこともあるって話だったなそう言えば。」
「……………。」