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【進撃の巨人】片翼のきみと

第205章 開戦⑤




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ほんの数秒。

その温もりに触れただけで、驚くほど心が落ち着くのがわかった。



私はまた……大事な人を救えなかった。



私がいる意味の大半を果たせなくて……サシャの笑顔を永遠に失った。

でも……だからここで蹲って泣いたって、なにも変わらないから。進み続ける、見届けるって決めた。だから……どれだけ大事な人が、愛しい人が傷つこうとも、死のうとも……この自由の翼は放棄しない。

――――エルヴィンにこの結末を届けるまで。



肩を抱いてくれたリヴァイさんの手をとって、もう大丈夫だと笑みを返す。リヴァイさんは何も言わず、ただ少しだけ安心したように私を見つめてから、私の側を離れた。

その後私はその他兵士の負傷者の手当に回った。

アーチさんの足の怪我も大したことはなく、彼の回復力ならすぐに元通りになるだろう。

――――少し心を乱していたサッシュさんのほうを見ると、アーチさんが側にいてくれて……アーチさんの頭を小突くサッシュさんはもうすっかりいつもの様子だ。きっとあの優しい分隊長は……多くの命を奪う命令を下しては心を削がれて……少しだけ、魔が差したんだと思う。でも戻って来てくれた。




――――私が今一番話をしたいのは……しなくちゃいけないのは……





「――――エレン。怪我してる?診せて。」



「――――いい。勝手に治る。」





口元から血を流したエレンの横に腰かけてその顔を覗き込むと、エレンはふいっと顔を背けた。





「私が心配なの。いい子にして。」





なんとか目を見て話したくて、その腕を引いてみても……あっさりと振り払われてしまう。





「いらないって言ってるだろ。」



「はは、ごめんねナナちゃん。弟は多感な時期だからさ?」



「――――………。」



「なんなら俺が診て欲しいぐらいだよ。兵長、容赦ないから痛くて。」



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