第17章 蠱惑
「さて、そして君も………この作戦の本当の意味を理解しているはずだ。なぜ、それをまた私から聞き出したかったのか理由を聞いても?」
エルヴィン団長の蒼い目に射られる。
背中に汗がにじむような心地だった。
私などが、なにを試そうとしたのだろうか。
その瞳には、全てお見通しだったのだ。
「私が勝手に信じたかったんです。エルヴィン団長は、たくさんの人を見殺しにするような作戦を受け入れるはずがない………って―――――――――。」
「―――――そうか。そうだね……もちろんこんなバカげた作戦は、内心穏やかではないよ。ただ、私は君よりもよく知っているだけなんだ。………この国の中枢が、保身と都合のためなら、いくらでも人を犠牲にすることを厭わない人間ばかりだということを―――――――――」
珍しくエルヴィン団長の目に冷たい怒りが宿る。
透き通る空のような瞳に、影が差した。
「それって…………。」
「今の状況で、どうあってもこの作戦の根本を覆すことはできない。下手をすれば、壁の中で強制的に市民が間引かれる――――――奴らにとっては容易いことだ。それならば、この一手を………市民の大量死を目論む作戦を利用して、私たちのこの先に繋がるものを得るために動く。これが、偽りない、この作戦に対する私の考えだよ。」
言葉が出なかった。一瞬エルヴィン団長に落とされた影に、どんな過去が秘められているというのだろう。
怖い、でも知りたい。私は少しずつエルヴィン団長の闇に魅入られていた。