第204章 開戦④
ハンジがガキ共に気付いて、目をやる。
「え?なにこの子達?」
「誤算だ。」
たった一言の誤算で片づけられたことに納得いかなかったのか、ジャンがイェレナに詰め寄った。
「イェレナ!!顎と車力はお前が拘束するんじゃなかったのかよ?!仲間が余計に死んだんだぞ?!」
「悪かった……。確かに2人を穴に落としたんだけど……脱出されてしまった。私の失態だ。」
「――――その余波でお前が予定より多めに石つぶてを俺達にくれてやったわけか……。道化にしては大した即興劇だった……なぁ?髭面ぁ……。」
「――――そう睨むなよリヴァイ……小便ちびったらどうしてくれんだ?お前こそ大した役者じゃないか。俺を殺したくてしょうがなかっただろうになぁ……。」
――――エレンとジークの ”秘策” が夢物語でない可能性がある以上、まだ殺せねぇだろうと高を括ってやがるその言い草が腹立たしい。――――クソが……。
「俺は……一番食いてぇもんを最後まで取っておくタイプだ。よぉく味わってから食いてぇからな。」
俺達が完全にお互いを信じた上での結託と作戦決行ではなかったことを肌で感じ取ったのか、エレンがこの作戦を決行したことの正当性を説いた。
「マーレ軍幹部を殺し、主力艦隊と軍港を壊滅させた。これで時間は稼げたはずです。」
「世界がパラディ島に総攻撃を仕掛けてくるまでの時間かい?」
――――それは確かにそうだ。
これで俺達が帰着早々、空から……海から総攻撃を受けて、島もろとも滅ぼされるということはないだろう。
――――だが……この作戦の決行で失ったものは大きい。それはハンジも同様に感じているようだ。
「……私たちは君が敵に捕まる度に命懸けで君を取り返した。どれだけ仲間が死のうとね……。それをわかっておいて自らを人質に強硬策をとるとは……お望み通りこちらは選択の余地無しだよ。君は我々を信頼し……我々は君への信頼を失った。」
ハンジの言葉はいつになく重く苦々しいものだったが……エレンに全く反省の色はなかった。――――ただこうするしかなかった、これが正しいと……言わんばかりだ。
そんな弟を庇うかのように、ジークはハンジを見上げて言った。