第204章 開戦④
「――――だがこうして始祖の巨人と王家の血を引く巨人が揃った。すべての尊い犠牲がエルディアに自由をもたらし必ず報われる。」
――――その時、搭乗口から続く扉が静かに開いた。
そこに佇んでいたのは、髪から顔、胸、手までを血に染めたナナだ。
その姿を見た全員が、ざわ、と身震いするほどだった。
「――――……サシャの……死亡を確認しました。」
ナナの後ろから続けて出て来たコニーが、大粒の涙を流している。ナナもまたその横で………仲間を失った悲しみと、自分の無力さを突き付けられたように顔をしかめて……強く拳を握りしめて俯いた。
そんなナナとコニーをエレンもまたじっと見つめて、小さく言葉を発した。
「なぁコニー……サシャは……最期……何か言ったか?」
「――――肉……って、言ってた……。」
――――何を思ったのかエレンは――――……笑いやがった。
「くくっ………。」
その笑うエレンを見て――――……ナナもコニーもサッシュもジャンも……誰もが目を見開く。
何が可笑しい。
仲間の命の重みすら――――……どうでもよくなりやがったか?
「……エレン……お前が……調査兵団を巻き込んだからサシャは死んだんだぞ?」
サシャとコニーと最も近しく一緒にいたジャンが……怒りに震えながら、エレンにその笑いに疑問を呈した。だがエレンは何も答えず―――……妙な沈黙が流れる。
そんな変わってしまったエレンを嘆いたのか、サシャを救えなかった自分を責めているのか……
ナナは静かに……自らの心臓に爪でも立てて握っているかのように強く胸を押さえて俯き、肩を震わせた。