第204章 開戦④
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呼ばれたのは、まさに飛行船の高度を上げて再浮上させようとしている時だった。私は不慣れながらも、オニャンコポンさんの指示を受けながら飛行船の操縦補佐に当たっていた。
「――――ナナさん!!サシャさんが――――……っ!!」
サシャが腹部に近距離から被弾したと、アイビーは青い顔で言った。それを聞いたオニャンコポンさんがぎり、と唇を噛みしめて言葉を漏らした。
「こんな時に……!」
本当に問題なければ、オニャンコポンさんはすぐに仲間の命を救うために行けと言ってくれる人だ。
――――けれどそれを言わなかったのは、強風が吹き荒れる中での飛行船の再浮上の難しさを物語っていた。
「アイビー、そこにいる人でまず止血を試みて!!高度が安定したらすぐ行く!!」
「はっ、はい!!」
本当は今すぐにサシャの元に駆けつけたい。
けれど飛行船が墜落することだけは、最も避けなければならない。
――――ごめん、ごめんねサシャ……!もう少しだけ、待って……!
サシャのことを気にしながらも、操縦に注力する。
何度か船体が大きく揺れる場面があったけれど、なんとか持ち直して飛行船は軌道に乗った。
「――――ナナさん、いいです!行って!!」
「はい!」
オニャンコポンさんの指示があってすぐに私は治療用のバッグを持って、搭乗口へと急いだ。
扉を跳ね除けて目にしたのは――――……
床に倒れ、腹部からドクドクと血を流しているサシャだ。