第204章 開戦④
「ん?何か音がしましたよ。」
目も耳もいいサシャが何かに反応した。
こいつの感覚は優れてる。
――――最後の最後まで気を抜かない。サシャが察知したそれに耳を傾けられるように、勝利に浮かれる奴らを牽制した。
「―――おいお前ら!静かにしろ!!」
まだ収まらぬ興奮と喧騒の中、コニーがあることに気付いた。
「ロボフさんはまだか?」
「もう登ってくるはずだが……。」
ジャンがロボフさんの様子を確認しようと搭乗口の方へ一歩足を出したその時、俺の目に飛び込んで来たのは――――、子供。
だが、その身のこなしと素早い銃を構える動作から、相当訓練された手練れだとわかった。
「―――――伏せろッッ!!!」
そう発した声と同時に銃声が鳴り響いた。
――――腕に腕章をした女のガキがライフルから放った一発の凶弾は――――……サシャの腹を、貫いた。
「――――サシャ?!」
腹から血が噴き出して――――……さっきまで笑っていたサシャは、どさ、とその場に倒れ込んだ。
同時に銃を構えたジャンが容赦なくそのガキに向けて発砲したが、続いて搭乗口から現れたもう一人の男のガキが女のガキを庇うように飛びついたことで、ジャンの放った銃弾は相手に当たることなく、飛行船内部を溶接している金属に当たり、ギィン、と鈍い音を立てて弾かれた。
俺が指示するまでもなく、先ほどまで浮かれていたフロックたちは総員でガキ2人を確保した。
「――――ナナを早く!!サシャが被弾したと伝えろ!!!」
俺の指示に、ガタガタ震えていたアイビーが頷いて操縦室の方へと駆けた。