第203章 開戦③
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やってくれた。
ジークは無事兵長が確保したようだ。
それに……想定外だったが車力も……みんなが仕留めた。あと残すところはこの水晶体に守られた戦鎚を何とかして食えれば……。
そして、顎の巨人。
あいつを……仕留めるか、こいつも食ってやる。
――――まずは戦う相手をよく観察する。
ユミルの顎の巨人とはまるで性能が違う。
――――さすが選ばれし戦士ってことか。
顎の強度、爪の強度、判断力、俊敏さ……どれをとってもなかなか厄介だ。俺の硬質化では防げそうにない。――――現に連撃を入れられている俺の体は、鈎のような爪で切り裂かれた傷がいくつもついている。
――――だが俺は気付いた。
偶然手にしていた戦鎚の女を守る水晶体で顎の巨人の攻撃を一度受けた時。嫌な、鈍い音がした。
「――――………。」
手にしている水晶体を見れば、奴の爪痕がしっかりと、水晶体を削り取っている。
――――こいつの顎、爪の強度ならば……水晶体でさえ砕けるってことだ。
ちょうどその瞬間――――遠目に予定通り、飛行船が見えた。顎の巨人はその飛行船に気付き、俺達が逃げると踏んだのか……焦ったように飛行船を叩き落そうと駆け出した。
――――甘ぇよ、そこには―――……
「そうなると、思った!!」
「さすがだ、ミカサ。」
顎の巨人の俊敏な動きを可能にするその両脚の健をミカサが鋭い刃でぶった斬った。見事なまでに機動力を失って地に転がった顎の巨人の腕をもぎ取り、何の抵抗もできないようにしてから――――、その強靭な顎に、水晶体をねじ込んだ。
「――――使わせてもらうよ、その顎。」