第203章 開戦③
何かを企んでやがるな。
へらへらと笑っちゃいるが、ナナに何もする気がなけりゃイェレナからここまで細かいナナの情報が行くわけがねぇ。
―――フロックがナナを脅して調査兵団に連れ戻したのは……こいつが裏で糸を引いている可能性が高い。
「……教えてくれないならいいよ、後で本人に聞いてみるから。」
「――――先に言っておくが。」
「うん?」
飛行船の真下まで来て、飛行船の下部に固定された丸太に立体機動のアンカーを放つ。
「――――ナナに何かしやがったら……お前もお前の仲間も、家族も――――……皆殺しだ。」
「……皆殺し、とか言っちゃう男はモテないぞ?」
「――――……。」
どんなに脅してもこいつには効果がない。
そののろりくらりと威嚇をかわすところも、気にくわねぇ。
ワイヤーを巻き取り始めると、その音で察知したのか……飛行船の中から、急いで顔を出したのは――――……ナナだ。
「おかえりなさい、よくご無事で……っ……!リヴァイ、兵士長……!!」
「――――あぁ。」
とにかく待ち望んでいたという、涙を堪えて安堵するような表情を俺に向けた次の瞬間、ジークと目が合ったのか……その大きな目を見開いて、動揺に瞳を揺らした。
「初めまして、ナナさん?」
「―――――っ……あなた、が………。」
口元に笑みを浮かべながら口上を述べるジークに、ナナは僅かに後ずさった。
「エレンの兄、ジークです。お目にかかれて光栄です。」
「――――ナナ、です……。」
名乗れば律儀に名乗り返すナナの性格までお見通しか。そこから会話を繋げて何を探ろうとしてやがる?
もしくは……動揺させたい狙いか。
……ろくなことを考えてねぇな。