第203章 開戦③
獣の本体からジークを切り出し、回収する。
その為の目隠しと、死んだと思わせるために……すぐさま獣のうなじ付近で小型の爆弾を仕掛ける。爆発したその瞬間、数メートル先の建物の上から巨体が血しぶきと共に落ちて来た。
サッシュ、やったのか。
車力の巨人だ。
粉塵と車力から本体の人間が炙り出される蒸気に紛れて俺は、そのムカつく髭面と再会を果たした。
「――――よぉ、久しぶりだな。」
「………はは、相変わらず人相が悪いな……兵長殿。優しくしてくれよ?結構痛いんだからさぁ。」
「――――安心しろよ、もっと痛いのは後のお楽しみだ。」
ジークの両手両足を巨人の体から切断して、回収する。
飛行船がもうそこに、見えている。
あと危険なのは――――……あのちょろちょろと動き回る顎の巨人か。――――だがあいつは、エレンとミカサがやる。それにサッシュも増援に行くだろう。
俺はまず人目が遮られている間にジークを飛行船に運んだ。
――――ナナとジークを会わせることを、できればしたくなかった。ナナから見ればジークは愛しい男を殺した仇で……、手紙でやりとりをしていたその時ですら、筆跡と文面から読み取れるほど………何かを押し殺して耐えているのがわかったからだ。
……そんな俺の思考でも読んだかのように、飛行船に向かう途中にジークが言った。
「……実は楽しみでさぁ。」
「――――あ?」
「――――リヴァイ……あんたの大事な人に、ようやく会える。」
「――――黙れ。」
「なんだっけか? ”兵長が愛しすぎてる妻” だったか?……はは、あんたに愛する女がいるとは驚きだ。そんな怖い顔してたら嫌われるぞ?」
「黙れと言ってる。もっと細かくして運びやすくしてやろうか。」
「……怖いなぁ。……あぁでも本当に……楽しみだ。 ”ナナさん” に会えるのが。――――スーツでも着てくればよかった。」
「――――………。」
「ナナさんにはエレンもお世話になって……すごく懐いているって話じゃないか。弟が世話になったお礼もしなきゃなぁ。なぁ、ナナさんは何が好きだ?やっぱり女の子なら甘いものとかか?」