第203章 開戦③
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――――道化は道化らしくシナリオ通りに動けばいいものを……。
「――――随分派手に……石ころをぶん投げてくれたなぁ……?」
お前のその即興で何人死んだ?
俺達の仲間が……。
沸き起こる殺意を押さえつつ、襲撃のタイミングを見計らう。―――――だが、ジークは俺達を殺すつもりではない。つまり……予定よりも俺達に打撃を喰らわせてきてはいるものの……大筋の作戦は完遂するつもりのようだ。
「後でたっぷり……吐かせてやる。」
その時、大きな爆発が遠くで起きた。
――――アルミンがやったか。
それに焦ったのだろう、顎の巨人がエレンを狙って動いた。獣の背後が手薄になったその一瞬で、アンカーを刺して奴の背後に回る。
――――得意だ、奇襲は。
視界良好な平野の……あんなクソみてぇな状況下でエルヴィンが簡単に言いやがった『奇襲しろ』。
それに比べりゃ、こんな障害物と身を隠すところだらけの俺達に有利な戦場はねぇよ。
ただ一つ気を付けなきゃな。
「―――――勢い余って、殺しちまわねぇようにな……!」
――――このまま刃の角度を少し変えれば。
首を刎ねてしまえば……。
エルヴィンとの約束が果たせる。
ナナから最愛の男を奪ったその仇を、返してやれる。
――――だが……まだ用がある。
こいつには。
ぐぐぐ、と強く握った刃の柄をもう一度握り直す。
――――そしてこともなく、俺はジークの項を削いだ。
その巨体が崩れ落ちる瞬間に、ジークを頼みの綱にしていたのであろう……敵国のガキ2人と、それを守ろうとしている敵兵と目が合った。
――――まさに ”悪魔” を目の当たりにした、そんな表情だった。