第203章 開戦③
ほんの僅かな指示で、サシャは身を隠しながらもうまく機会を見計らって――――……その一発を放った。
俊敏に動き回る対象の……縦1m横10㎝どころか、縦横数十㎝しかないその機関銃の操作部に覗く兵士の額を、一発で撃ち抜いた。
車力本人もそんな経験がないのだろう、想定通りの動揺で動きを乱した。他の機関銃も銃撃が止んで、目論見どおりにジャンが車力の目元から雷槍を撃ち込んだ。内部から爆ぜて武装が解かれる。
「撃て!!!撃ちまくれ!!!」
銃撃から身を隠していた仲間が一斉に雷槍を撃ち込む。
機関部に乗っていた兵士は全員死んだ。
車力本体も手足はもげ、頭の半分を損傷して――――、地に転がった。
――――やはり俺は甘いのか。
その光景を見て、心臓が握りつぶされそうに圧縮した。
こんなことをしたかったわけじゃない、ただ守りたかった。
――――そしてこいつら……マーレ側の奴らもきっとそれは同じで……いつか作戦会議の時にナナが言った言葉が頭をよぎる。
『大事な人を守る為に、その境遇に甘んじる辛い道を、選んだ人なんじゃないかと、思うから。』
大事なものを守るために、殺す。
それが正しいのか、これで良かったのか……、そんなことで惑う俺の横をすり抜けて止めを刺しに……車力の中身の人間を完全に殺そうと雷槍を構えたのは――――ジャンだった。
巨人化を保てず、本体から出て来た車力の中身の女を庇うようにジャンの前に両手を広げて立ちふさがったのは、子供だ。
必死に仲間を守ろうと……大切な人を守ろうとするその目は……俺達が仲間を守ろうとするそれと――――……同じじゃねぇか………。