第17章 蠱惑
「あーーーーーぁ。やっぱそうかよ、畜生!!!」
ナナが去ったあと、サッシュはその場に座り込んで頭を抱えた。
「人類最強で、顔が良くて、頭が良くて、兵士長で………ナナまで手に入れて………なんなんだよ、不公平だろ………!…………あぁ………まぁチビなところが若干の救いだな。」
「だれがチビだって?」
呟いたサッシュの言葉に、鋭い声が被せられた。
サッシュは背筋が凍るような思いで恐る恐る振り返ると、そこにはリンファが立っていた。
「………似てただろ?兵士長のマネ。」
くっくっくと意地悪く笑う。
「………ってめぇ、やめろよ!心臓止まるかと思っただろ!」
「盛大に惚気られた上にフラれるとかもう、祭りみたいだな。」
「………うるせぇよ。のぞき見してんじゃねぇ。」
「来週の調整日、飲みに行くの付き合ってやるから。予定空けとけよな。泣き言、聞いてやるからさ。」
「はぁ?!泣かねぇよ!んで、勝手に決めてんじゃねえ!」
「じゃ行かない?」
「…………行くよ。俺行きたい店あるんだ、譲らねぇぞ。」
「はいはい。」
「そんで、驕れよ。」
「嫌だね。」
リンファは悪態をつきながらも、サッシュの側に同じようにして座った。
「本当に欲しいものは、いつだって手に入らねぇよな―――――――。」
リンファが空を見上げてポツリと呟く。
その言葉は、冷たい風に攫われていった。