第202章 開戦②
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「――――リヴァイ、兵士長……。」
「どうした?ナナ。」
「――――いえ。」
呼ばれた、気がした。
「心の声……?」
ふと、不謹慎にも笑みが零れてしまう。
もしも、リヴァイさんが私を呼んだのなら。私は今それが、聞こえた気がした。そしたら……エルヴィンは怒るかな。
『離れていても君の声が聞こえるのは俺の特権なのに』……そう、言っていたよね。
――――今でもね、聞こえる時があるの。
……ううん、ちょっと違うな……、聞こえるんじゃなくて、蘇って鮮やかに再生される。
あなたの声。
あなたの言葉。
「――――はい、私にできることをやります。――――見てて。」
戦闘服の下に身に着けている片翼のネックレスに手を添える。ハンジ団長と一瞬目が合って……少し、笑ってくれた。
「ハンジさん、みんなを回収できたらなるべく急いで高度を上げます。回収完了の合図を下さい!ナナさん、操縦補佐を頼みます!」
「了解!」
「はい!」
闇の中、レベリオの広場の方で発光を見かけた。
――――誰かが巨人化した。
戦っている。
今も、そこで……。
空気量を調節するバルブの操作レバーを握る掌が、じっとりと汗ばむ。
鼓動が早い。
――――お願い、お願い……無事に帰って来て……。
どんな怪我でも、私が治すから。
そのためにここにいる。