第202章 開戦②
「―――オニャンコポンさん、高度を上げて操縦補佐が必要なくなったら教えてください。――――絶対に怪我人がいる。急いで手当に回りたいです。」
「……了解です!」
明かりが導いてくれる光の道を見つめる。
――――そこにいるの?
エレン。
あなたは何を思って……この作戦に乗ったの?
罪のない人を大勢殺して……
子供たちを、踏みつぶして……
エルヴィンを……殺した……ジークの策に、乗った……?
もうすぐ予定通りいけばこの飛行船に、リヴァイ兵士長が確保したジークが乗る予定だ。
初めて……私は愛しい人を殺した人物と相対する。
身体が少し震えるのは、怖いのか、怒りか、憎しみか。
―――――その人と話した時、私はどうするのだろう。
装備している銃を、見つめる。
――――壁内人類を、大切な人を守るため……なんて綺麗ごとじゃなく、憎悪に任せて殺そうとするかもしれない。
生きていることを、許せないと思うかもしれない。
壁の中にいた時は、自分がこんな思いを抱くなんて……想像もしていなかった。
「――――誰の中にも、きっといるんだね。……悪魔は………。」
エルヴィンやエレンが特別なわけじゃない。
きっと私の中にも、フロックさんの中にも……誰の中にも悪魔はいる。
その悪魔と対峙する時が、刻一刻と近付いてくる。
「――――大丈夫。私は……ちゃんと自分を保てる。感情に任せて自分を見失わない。――――そう、学んだはず。」
深呼吸をして自分に言い聞かせる。
それに、そこにあなたがいてくれるから。
―――――リヴァイさん。
あなたがいてくれたら、私は私でいられる。
だからどうか無事に帰って来て。
――――あなたがいるから……あなたが信じてくれるから、こうして戦える。
どんな血だまりでも、どんな残酷な世界でも歩いて行ける。
見届ける。
最後まで。
――――だからずっと………
この命がある限り、あなたと共に。