第202章 開戦②
ナナのその表情は、辛そうだった。
俺になにかあったら、なんて考えることもしたくない、そんな顔だ。
――――だが腹を括ってる。
サッシュも、ナナも。
誰を失おうとも歩みを止めない、作戦を成功させるまで突き進む。
――――そうしなければ……明日、愛しい者達が待つあのちっぽけな島が、悲鳴と炎に包まれることになる。
『――――エルヴィンが生きていても、確かに……、ここは備えるだろうね。』
サッシュとナナの真摯な意見にハンジも首を縦に振った。
――――俺はなぜか……、僅かに、心臓を押さて圧迫していたようなものが、ほんの少し軽くなったような気がしたんだ。
「――――兵長?」
「なんだ馬鹿。」
「また馬鹿って言う……。あのですね、向こうの方で恐らく別の巨人―――――。」
そうサッシュが言いかけた時、戦鎚の背後で巨人化の発光が起こった。
「―――――またかよ?!」
「――――いや、これはエレンだ。――――念のため援護に入る。」
「兵長!!別の巨人が奇襲する可能性があります!車力か……咢か……鎧はない。あんな巨体を隠せないはずだから。」
「――――わかった。お前もいろ、側に。」
「―――――はい!!!」
――――頼もしいな。
俺の背をいつも追って来る。追い抜こうとがむしゃらに。
「―――――悪くねぇ。」
いつか……いや、もう割と近い未来。
お前は俺の横に並ぶのか。
そうすれば、また新しい関係が生まれるのだろうか。
――――俺とエルヴィンの、歪だが信じ合えた……唯一無二の……あの関係に似た、新しい何かが。
ミケと月夜に盃を交わしたような――――……あんな、心の内を吐露できるような関係に似た、何かが。
――――その時、そんな新しい関係に少し戸惑う俺を見て……きっとお前は嬉しそうに笑うんだろう?
―――――――ナナ。