第202章 開戦②
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――――どうしてこんなことになったの……?
私の目の前にいるこれは、誰。
――――エレンは……エレンは……罪もない人が突然命を奪わられるその不条理を知っているのに。
――――例え生き延びたとしても……これまで当たり前に暮らしていた “日常”が突然奪われることがどれほど悲しくて、辛くて……行き場のない想いを抱えて生きていくことになるのか、知っているのに。
「――――エレン。あなたは……自分が何をやったのか……わかってるの?」
――――私たちが来ることを、信じてた。
いや違う。
自分を放っておけないことをわかっていて……自分を盾に、私達を動かした。
半年以上離れたのは、初めてかもしれない。
目の前のエレンは髪が伸びて……伸びた髭に、感情のないような目。
「――――あなたは……民間人を殺した。子供も……殺した。もう……取返しがつかない……。」
「ミカサ。まだ終わってない。」
一瞬私を見たエレンは、その先の戦鎚の巨人に目をやった。
振り返るとそこには、雷槍を7本一気に喰らわせたはずの戦鎚の巨人が、蹲るようにして立ち上がろうとしている。
「……そんなはずはない。うなじを完全に吹き飛ばした……。」
「ああ、俺もうなじを念入りに潰した。―――だが奴は死んでいない。」