第202章 開戦②
―――――――――――――――――――
サッシュ隊長のあの様子じゃ、この異常な炎……放火は、サッシュ隊長の指示じゃねぇ。
――――こいつの独断だ。
「わかってんのかフロック?!必要以上に民間に手を出すな!!」
「ジャン、ここにいるのは敵と、敵の住む建物だけだ。」
――――こいつはいつからこんなに目の据わった表情をするようになったんだ。
フロックのその顔は……殺す事、奪う事に良心の呵責すらなくした奴の顔だ。
――――あぁそうだ……あの日、ナナさんが怯えていたのは……こいつのこういう怖さに、だったのかもしれない。
「俺達壁内人類がどれだけ壁の外の奴らに殺されてきたか忘れたか?!食い殺されたんだぞ?!まだまだこんなもんじゃ済まされねぇよ!!」
「お前まだそんなこと言ってんのか?!」
この破壊も放火も、あくまで正当だと言い張るフロックの肩を、掴んだ。
「見ろよ。エレンは示した。――――戦えってな。俺達はただ壁の中で死を待つだけじゃない。――――俺達には悪魔が必要だ。……次の悪魔。」
「――――次……?」
「――――あの人にはもっともっと悲惨な地獄絵図を、見せてやらないと。」
「――――あの人……?」
次?あの人?なんのことだ。
悪魔……?
……エルヴィン団長を悪魔だと言ったこいつの以前の発言と関係あるのか。フロックはそう言って真っ暗な上空を見上げた。
――――光の道に沿って間もなく来る飛行船。
――――そこに、乗ってるのは……。
「――――お前まさか、ナナさんに何か………!」
フロックは昏い目で、僅かに口角を上げた。
――――待てよ、何を……企んでやがる……?!
「――――ジャン!!敵兵が増援を送ろうと荷台を運んでる!!」
「――――ッ、止めるぞ!!お前ら!!」
『はいっ!!』
そこでは結局フロックにナナさんのことを追求できないまま、増援に来た兵士が武装する前に一掃するべく、俺達は再び飛び立った。
―――――また、人を……殺すために……。