第201章 開戦
ライナーが怯え切った様子で何かを話そうとした瞬間、外からは一際大きな歓声が上がった。
「幕が上がったようだ。聞こうぜ。」
――――タイバー家の演説は……俺が巨人の力を通して見た過去と照らし合わせても嘘偽りはない。真実だ。
そしてパラディ島に引きこもったエルディア帝国の脅威は今もなお健在だと、タイバーは主張した。
「聞いたかライナー。あれが壁を破壊した理由だろ?お前たちは世界を救おうとした。そうなんだろ?」
俺の言葉にライナーは一瞬、安堵したような表情を見せた。
――――赦されたいのか。
だがまた自分の中の何かと葛藤するように、目を逸らした。
「何も知らねぇ子供が4人……あの島に放り出された……。まだ何も、知らなかった。そうだろう?」
頭を抱えて怯えるライナーを見て、ファルコは察した。
――――おかしいと、思ったのだろう。
4年ぶり……4年前、ライナーはここにはいなかった。パラディ島に潜入していたんだから。
そこでの知り合いということは……目の前にいるのは、 ”パラディ島の悪魔”なんじゃないかと、畏怖の目を俺に向けている。
”――――近年、永年の平和を望んでいたフリッツ王の思想は淘汰され、始祖の巨人はある者に奪われました。世界に再び危機が迫っています。―――――平和への反逆者……その名は……エレン・イェーガー。”
外から聞こえるのは、俺を全世界の敵と位置付ける御大層なご紹介だ。
ファルコはぶるぶると震え出した。