第200章 魔法 ※
「――――そんなこと、言わないで……。」
「――――………。」
「絶対、会えるって……言ってください……。いつもみたいに……『覚悟しとけ』って……」
こんな風に駄々をこねて縋る私を、ちっとも成長していないと……あなたは呆れるだろうか。
でも、心臓が縮む。
苦しい。
『――――必ず戻るよ。』そう言って……二度と戻らなかったエルヴィンと重なってしまって、縋らずにいられない。
――――怖いの。
行かせたくない。
リヴァイさんは私が口を塞いだ手をそっと握った。
「――――できねぇ約束は、しない主義だ。」
リヴァイさんはこの上なく冷静に、言った。
……この作戦がいかに困難か、危険かを正しく理解している彼は……無責任に『絶対』などと言わない。
「――――なら、私が………。」
「――――………。」
「――――……っ………。」
私が言う、そう……希望を込めた約束を口にしようとして……それも憚られた。
フロックさんの言った『ただのお荷物でしかない』その言葉が頭をよぎる。私が何の役に立つのかはわからない。むしろフロックさんの言う通り、お荷物でしかないかもしれない。
「――――やっぱり……私に、命じてください、リヴァイさん。」
「――――あ?」
「魔法を、かけて………。」
怖くて。
あなたの強く早い鼓動が失われて……冷たくなっていくのを見るのも。
私が死んで……亡骸を抱いて泣くあなたを想像するのも。
多くの仲間を失って、表情を変えずにただ心を削がれていくあなたを想像するのも。
いくら決意をしたところで恐怖に震える体は止められなかった。
――――それでも……、それでもこの行く末を見届けるって決めた。大事な人を諦めないって決めたから。
――――私にできることをやるんだ。