第200章 魔法 ※
サッシュさんやアイビーがいる班のみんなが潜入のためにパラディ島を発つ日、私は見送りに来ていた。
「――――どうか無事で。アイビー。」
「はい。ナナさんも!」
「うん……。無茶、しないでね。サッシュさんがいるから……大丈夫だと、思うけど……でも、やっぱり心配……。」
「大丈夫ですよ!ちゃんと役目を果たします。サッシュ分隊長も……フロックさんもいてくださるし、心強いです!!」
「そう、だね………。」
ずっと気にはなっていた。
――――主に新兵からの、フロックさんのこの信頼のされようはなんなのだろう。
抜きんでてリヴァイ兵士長みたいに戦闘力があるわけじゃない。アルミンのように奇策を練るタイプでもない彼が……、いつも周りに新兵を取り巻いて、なにやらこれまでの調査兵団とは違う空気を醸している。
――――と、一抹の不安を胸に抱えていると、そのフロックさんがアイビーを呼んだ。
「おいアイビー、荷物の搬入を手伝え。」
「はい!あ、じゃあナナさん、また!」
「………うん。どうか、無事で………。」
アイビーは振り返って船の船室の方へと消えて行った。
そんなアイビーとすれ違うようにして桟橋へ船からわざわざ降りて来たのは、フロックさんだ。
「――――はは、俺には無事でって、言ってくれないんですか?」
「………無事で。」
「愛想ないなぁ。」
フロックさんはにやりと笑って、私の横を通り過ぎた。
その時にぼそりと、耳元で囁いていった。
「――――俺がいないからと言って、妙な動きをするなよ。――――見張りはつけてる。いつ、どこにでも。」
「………っ………!」
「――――見届けて下さい、ちゃんと。――――どんな地獄絵図でも。」
ぽん、と私の肩に触れる。
思わず私はその手を凄い勢いで振り払って彼を睨み付けた。