第17章 蠱惑
訓練が終わって約束の場所に来てみると、サッシュさんの姿が見えた。
「すみません、お待たせしました。」
「いや、待ってねぇよ。」
サッシュさんは笑顔で迎えてくれた。
早速私は、サッシュさんに細かな部品の調整や、螺子の締め方、遊びの持たせ方などを習った。そのどれもが経験値からくるもので、さすがだなと感心して話に聞き入る。
サッシュさんはもう入団して五年目だと言っていた。
この調査兵団で五年も生き延びているのは、数えるほどしかいないそうだ。時に実力があるゆえに横柄な態度をとることもあるとリヴァイさんが言っていたが、もともとの実力だけでなく、人一倍陰で努力している人だから、行動を起こせない人にもどかしさを感じるのではないだろうか。
彼の真剣な表情を見ていて、強くそう感じた。
「よし、じゃちょっとこれで飛んでみろよ。違うと思うぜ。」
「はい。」
私はサッシュさんに習って調整をした立体機動装置を身に着け、訓練場の障害物を駆け上った。今までにないほど、身体が軽い。
思い通りに動ける。翼が、生えたみたいだ。
空へ駆けのぼった瞬間の、一瞬の無重力。
自分に翼が生え、鳥にでもなったかのような感覚。
「!!!!」
私は上機嫌でしばらく飛び回って、サッシュさんのところに戻った。