第199章 愛日
「――――そういえば今回作戦に使用する飛行船は、まるで違う原理ですよね……?あれは……ガスの浮揚力……?」
「そう、流石です……!飛行船はまた原理が異なる。あれは……ヘリウムガスで浮かせて、プロペラの推進力で動かしているんです。」
「……今回の作戦には低空・低速での飛行が可能なものでなくてはいけない……だから飛行艇ではなく飛行船にしたということですね。でも……飛行船はガス漏れするような穴を開けられたり……銃撃されてしまえば、致命的……ですよね……。」
考えたくはない。
だけど、最悪の事を考えて回避しなくては。
――――これもあなたから学んだ。エルヴィン。
「――――そう、ですからやはり……いかに調査兵団が敵を無力化した状態にまで持っていけるかが、重要ってことですね。そしてナナさんに俺は驚かされてばかりなのですが……、何か……航空学みたいなものを学ばれて………いたはず、ないですよね……。だってこの島にそんな文明は……。」
オニャンコポンさんは不思議そうな顔を私に向けた。
――――どこまで話していいか悩む。
……けれどなんとなく、この人のことは私は……信用していいと、思うから。私は少し伏せ目がちに、答えた。
「――――生涯を誓った人と、いつか飛行船をこの目に見ることを夢見ては……空想話に花を咲かせたんです。――――彼もまた、外の世界に夢を……見ていた。私と、同じように。」
私の語り口調から、どうやらリヴァイ兵士長ではないと察したのだろう、オニャンコポンさんは聞きづらそうに、でも聞かずにいられないと言った顔で私に尋ねた。